2009年1月18日日曜日

ロンドンでダンサーになろうという方へ

変なタイトルになってしまいましたが、New art club ついでにダンサー/振付家になるまでについてかきます。
基本的にダンサーになりたいと思った子は大学あるいは専門学校にあたる学校へ行きます。俗にいう大学卒業資格BAをとり、しかしそう簡単に仕事が見つからないので修士MAをとり、ラッキーにもそこでうまく仕事が見つかればアペレンティスになります。
アペレンティスというのは研修生という制度で、卒業後各カンパニーの見習いダンサーとして働きます。LCDSのMAには提携カンパニーのアペレンティスになるコースというのがあります。もしくは各大学、学校の卒業生カンパニーにはいって経験を積みます。LCDSではEdge、ラバンにはTransitionがあります。これらのカンパニーは学校付属で、学校のシアターでの公演があることはもちろんですが、UK,ヨーロッパ内をツアーでまわります。作品はUKの若手振付家の作品で毎年異なります。ちなみにこれらのカンパニーにはいるには半分学生なので学費を払うことになります。だから完全なプロとはまだいえません。しかしこのカンパニーにはいるのにもオーディションがあり、卒業生の多くははいれずあきらめることになります。(もちろん各自で他のカンパニーをうけたり、自分たちでカンパニーを作ったりして活動しはじめる人もいるが地元に帰る人もいる)
その修行期間が終わる頃、がんがんオーディションを受けまくるということになります。働いているうちに人脈ができて、オーディションを受けたときに受かりやすくなるといわれていますが、実際にはかなり厳しく、特に女の子は仕事がありません。(逆に男性はかなり受かりやすいです。現在ロンドンダンス男女比はおよそ9:1。女性の方が圧倒的に多いのです)
ロンドンの大学をでた学生には2年間どのような労働をしても良いビザがでます。(今年改正されましたが昨年までは1年でした)従って、カフェなどでバイトをしながら、ダンサーとして時々働きながら生き延びるたくましきダンサーたちがたくさんいます。
しかし現実問題として、そのような生活がいつまでも続くわけではなく、日本人の場合その2年間の間に「労働許可証」をだしてくれるカンパニーに出会えなければ帰国しなければなりません。ヨーロッパ人の場合はそういうビザの問題はないのですがそれでもずっとオーディション待ちダンサーをするのはかなりきついです。
日本人で長く続けていらっしゃるダンサーさんもたくさんいますが、英国人と結婚して生活の不安がなくなった状態で続けていらっしゃる人がほとんどです。これは日本でもそうですが、ダンサーだけで食べていくというのは非常に難しいのです。私のようにたまたまがたくさん重なっている人もいますが、それはすごくレアなことだと思った方が良いと思います。
カンパニーダンサーとはいっても英国のカンパニーのほとんどがプロジェクトごとの契約を交わしていて、日本でいう終身雇用のような考え方はありません。ロイヤルバレエのみそれに近い制度があります。他のヨーロッパと比べるとまだ長く続けるダンサーが多いといわれていますが、それは英国カンパニーのほとんどが学校制度と結びついているからで、年間を通しての契約が可能になっているのは、教える仕事などを含めての契約だからです。そうではないカンパニーの場合、1ヶ月から3ヶ月くらいの単位で契約を少しずつ結んでいくことになります。
プロジェクトベースの場合、作品が売れれば公演も増え、収入も増えますが、売れなければ仕事がなくなります。従って生活はかなり不安定です。ラッセル(マリファント)は昔はスエーデン式マッサージの仕事をしていたとよく話していました。またダンサーがより良い条件を求めて移動する自由がある反面、振付家の方針で使われなくなることはありえます。ラッセルカンパニーでも「できる限り同じ人をつかいたい(なぜなら身体を作り上げていくその過程もまた作品作りだから)」という方針にも関わらず2007年にはメンバーの半分が入れ替わり女性から男性へと変化しています。カンパニーメンバーになったからといって、ずっと安心というわけではないのです。
私はダンサーという仕事は将来何かになるための研修期間のようなものだと考えています。振付家として自分の作品を作るための、あるいは教師として様々なダンスを伝えるための。いろんな考え方があると思いますがダンサーになることだけを目標として生きていくのではなく、その先に何ができるかを考えてみることは大切だと思っています。

このような状況をうけて大学などでの教える仕事や、カンパニーの運営できる環境を求めて地方へ移住するダンサーたちが増えてきました。アーツカウンシルイングランドの項目でもかきましたが、英国ではコミュニティーダンスの考え方が浸透していて、社会にいかに還元できるかを説明できなければ作品制作を続けることが難しいです。また英国の地方に文化を浸透させるために各地方にダンスセンターを設立しており、そのようなところと協力して作品制作やワークショップを行ないながら自分の活動を続けるという人がいます。
そのためにも修士(MA)などの資格が必要ということで、高学歴ダンサーが増える傾向にあります。

なお、ダンサーたちは仕事を求めてヨーロッパ中をまわるようになりました。どこの国のオーディションを受けにいってもロンドンダンサーがいます。ロンドンは学校がたくさんあって、ダンサーが余っているのです。ライアンエアとイージージェットを使えばヨーロッパ中どこへでも。特にヨーロッパ人はビザの問題がないため、自由に職を求めて移動できるのです。
おそらく今後このような流れは一層進むだろうと考えられます。日本でも同様に。


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