2009年4月30日木曜日

ロンドンの若手振付家⑧ Luca Silvestrini

☆Luca Silvestrini
ルカはプロテインダンスというカンパニーを有している。先日QEHでDear Bodyを発表したところ。宣伝をかねたインタビューはこちら

そもそも2006年のプレイスプライズ参加者(観客賞を受賞したとかいてある)だったルカは密かに作品を続け、今回70分にして発表。元々のバージョンを覚えているが、ダンサーも増え、ダンサー以外の一般人も巻き込み(ワークショップとオーディションでセレクトした10人ぐらいの老若男女が舞台上にあがる)、UK地方のダンスセンターを転々として稽古場を確保し、(ついでに作品を発表できる環境を整え)今回の発表。ここまでに作品を作りはじめてから既に3年が経過している。スプリングローディドだけでくったりしているが、すごいことである。(ちなみに2004,2006年の多くのプレイスプライズ作家は発表時点で既にキャリアを有している人が多かったが2008のメンバーはインターナショナルな分つなげるのが難しいらしく、ちょっと低迷している。私、コリン、マルソーのようにプレイス自身がピックしたグループもあるが、それにしてもビザ問題などでその後発展するのはかなり難しい。)
なお作品は英国マッチョ系おばかダンスともいうべき作品。好き嫌いはかなり分かれると思われる。
ただ、ルカの例のように3年かけるあるいはもっとかかって作品が成長していくことが不可能ではないわけで、そのゆとりはすごいと思う。

結構いい年。しかししぶとくがんばっているお兄ちゃん。照明はJackie Shemeshが担当。

ロンドンの若手振付家⑦ Robin Digemans

Robin Digemans
プレイスプライズに過去2回参加している振付家。(2008年組の中では唯一)とりあえず発想がとてもかわっている。そしてその発想を確信犯的に実行に移す力量の持ち主。プレイスプライズでは正直失敗したと思う、、(ごめんねロビン)ちなみに2009年のThe place Spring loadedのチラシは彼が野原の中で飛び跳ねている写真である。
明らかにうまいダンサーさんではない。とりあえず大男で、明らかに繊細なことは出来ない。しかし味のあるひとである。
今回の作品は28人の人を毎日スタジオに招いて、お話をし、彼らから動きを抽出し、作品を作り上げていったというもの。28人はダンサーではなく、普通に暮らす普通の人という基準で選ばれている。普通の人が普通にしている動作がいかに面白いかをシンプルな形でそして絶妙な構成力で作りきった。

ロンドンでダンスをみる⑨ Jackson's lane

Jackson's Lane
ロンドンは北部ハイゲート(ちなみにハイゲートは高級住宅街としても知られる、緑あふれた土地。友人によればロンドンで唯一の天然白樺林だそう)にある小劇場。客席数180くらい。どうも教会だったところを改造して劇場/稽古場/コミュニティセンターとしたのではないかと思われる施設。稽古場の方では一般の人向けのダンスクラスも多々行なわれている。

若手振付家の育成活動を積極的に行なっていることでも有名で、先日も友人のハギットとたけし君が公演(ちなみに彼らはフィンランドのコンペで優勝してしまったそう。ちなみにハギットはイスラエル人。とても熱く、良いダンサーでもある。)を行っていたのでみにいったところ。そのフェスティバルもcloud dance festivalといってかなりピンからキリまで大量の若手ダンサーの作品を見ることが出来るものでした。
ちなみに現在募集中なのはSecret Theatreという企画。これも一晩に4から8作品という形。従ってこった照明のものとかは出来ない。正しくは劇場の設備的にもあまりこったところで効果はない。しかしとても面白そう。

ロンドンでダンスをみる⑧ Laban

Laban center
北のLCDS(ロンドンコンテンポラリーダンススクール)、南のラバンといわれる、有名なダンス学校。ラバノーテーション(舞踊記譜法)でしられるあのラバンさんの学校がグリニッジにある。日本からの留学生も多く受け入れているので、この名を知っている人は多い。
舞踊学校なだけあって、学校付属の劇場があり、Bonnie Bird Theatreという。観客席は350くらい。プロセニアム形式の劇場で、壁が黒く(おしゃれ。ちなみにラバンセンターの建物自体も七色に輝いていて、重要建築物の1つ。建築を学ぶ学生さん必見の建物として有名)とても見やすい。良い劇場なのだが、今ひとつ知られていないのとおそらく警備の問題であまり公演数が多くない。もったいない限りである。
ちなみにスタジオシアターもあり、こちらは観客席を自由に設定可能。(およそ150席くらいだろうか)私がはじめてロンドンにきたときには母校の学生さんに混ぜてもらってそこのスタジオシアターで踊らせていただきました。なつかしい。もう4年以上前の話し。
ここにはボニーバードコレグラフィーファンドというのがあるからだしてみろと前にいわれたことがあります。若い振付家のための助成金です。ただしラバン出身の人が圧倒的に有利なのは確実だけれど、、、。

2009年4月6日月曜日

ロンドンの振付家⑥ Siobhan Davis

Siobhan Davis
UK ダンスを引っ張ってきたSiobhanさん、今年の春はVictria Miro というロンドンでも最も有名なギャラリーの1つでパフォーマンスを行なっている。そこのコレクションということになっているので、展覧会期間中、普通の美術品と同様に常設展示されている。つまり毎日3時間以上のパフォーマンスをダンサーは繰り広げ続けているのだ。これはある意味画期的なことではないだろうか。(ちなみにそこのコレクションには草間やよい水玉シリーズも含まれている。すみません。漢字がでてきません)
現在はエレファントキャッスルにスタジオを構え、作品制作を行なっているだけでなく、地域と連動したダンスイベントや、ワークショップ、若手のためのショーイング企画などを積極的に行なっている。(クラスの項目にスタジオ情報リンクしました。インディペンデントダンスというのがプロジェクトネーム。スタジオのページはこちら
ギャラリーでのパフォーマンスをみているとトリシャブラウンの作品が思い浮かべられる。独特の空気感とかるさ。しかしところどころユーモアのセンスがあり、(しかしこれは年齢層が高いダンサーたちのキャラクターによるのではないだろうか)とてもイギリスらしいと私は思う。(アンナ ウィリアムズの雰囲気もにていると私は思っている。)
過去に動物の謝肉祭(彼女の初期の作品)をみたことがある。ばりばり劇場ダンス。しかしやっぱりユーモアのある人だと思う。(ちなみにその時みたランバートの公演3作品の中で一番良かったのがその作品。今でも残る、いいものだと思う。)


2009年3月23日月曜日

私作品を発表したいんです!というあなたへ

私ロンドンで作品を発表したいんですけれどどこかないですかという人、まずは各劇場へ問い合わせましょう。DVDをおくってみるのも良いかもしれません。またコンペのようなものにだすのもありかもしれません。しかし基本的に外国人がいきなりやってきても相手にされません、、、。
私自身正直言ってどこにも知り合いがいない、学校もでていないところからスタートでした。どこに聞いたら良いのかもわからないという状況から、かろうじてつながっていきました。以下のところは比較的若い人を受け入れているからだしてみるといいよといわれたのが以下の劇場です。
でも実際には私の場合掛け持ち状態だったので、(日本にも頻繁に帰っているので、そう簡単に時期があわせられない)プレイスにしか応募していません。ただ、うちのリカルドはブルーエレファントにだしていました。多くの劇場とコネクションを持つことで助成金がとりやすくなったり、教えなど他の可能性につながります。またダイレクターの好みによってここは合うけれどここはだめみたいなものも多くあります。だから懲りずにだしてみること。
時間と機会があるなら実際にいってみること。話してみること。まずはそれからです。

☆Resolution!
プレイスの若手育成ショーケース。毎年1、2月に100団体以上の公演を一日3つずつ毎日行なっていくというもの。
はじめてでた場合、サポートは当日のリハ(3時間)テクニシャン3人。だけでしかないが、それでも日本の現状(ショーケース形式だとリハーサル時間は1時間未満がほとんど)を考えると感動的。劇場設備は日本でいう赤煉瓦倉庫が近い。(客席数は300)チケットの売り上げで経費がほとんどまかなわれる。
ここで作品のビデオを作り、あとは自分たちでどこでも売り込め!という形だが、アーティストデベロップメントのサポートや、ワークショップなども受講できるので、良い勉強の機会にもなると思う。
ただ問題は応募するには英国に住んでいなければならない。だから英国人の友人に協力してもらう必要がある。日本に住んでいても今までにここで公演しているひとは結構いて、ごまかすことは不可能ではない。
ちなみにセレクションの確率は2分の1だそうだ。

私は応募していないけれど、ここには若手のためのミックスビルがあるから良いわよとテリーザに教わった場所。(ちなみに彼女はプレイスのone to one sessionで担当してくれた人。現在はアーツカウンシル)
いずれもプレイスに比べると小規模だけれど、地域とつながったダンスイベントを多数開いている。微妙にセンターロンドンから遠い。しかしそれもまたみそ。
ジャクソンレーンは別に記入しました。劇場項目参照。

☆ROH
ロイヤルオペラハウスにも若手のためのショーケースというものがあるらしい。上にあるスタジオシアターで公演ができるというもの。キャパ数はおそらく150くらいだろうか。しかしこれは確実に英国在住のみ。

ロンドン以外の英国カンパニー③ Fabulous beast

Fabulous beast 
ここにあげるべきかどうか迷ったが、私がロンドンで見た中で数少ない面白いと思ったカンパニーなのであげておくことにする。というのもこのカンパニーはアイルランドのカンパニー。だから正式には英国のではない。ビザも異なる。しかしロンドンのバービカンと提携しているので、大体毎年ロンドンで見ることができるカンパニー。
英国流フィジカルシアターといったほうがいい。ダンスというにはもっとおおざっぱだし、もっとエナジェティック。題材にはジゼルなどテキストを用いているものが多い。実際に台詞も多用する。しかし、英語がわからなくてもわかる何かがある。ちなみにアイルランドはアイリッシュという言葉があり、通常の英語とは違うらしい、、、。
HP上の振付家マイクさんの言葉(manifest参照)はとても興味深い。多分彼なりに身体の本質をついていったらこんな風になってしまったのだろう。しかし基本テクニックはヨガ(それもなぜか日本で修行した人に習っていたらしく、妙に日本に詳しい。)。ラッセルさんと同じことをやっていてしかし出来上がり(作品)がこんなに真逆なのだから面白いものだ。
次の作品は春の祭典をイングリッシュナショナルのオーケストラと一緒にするのだそう。ダンサーだけで24人。派手な作品になりそうで楽しみ。

2009年3月17日火曜日

ロンドンでダンサーになろうという方へ③ ビザその2

ビザの問題について大きく変更になったことがあるので補足説明です。
昨年の11月よりTierという制度になり、すべてのビザがポイントで計算されることになりました従来のワークパミットによるビザもここに含まれます。それ自体はそれほど大きくないのですが、そのパミットを発給するカンパニー側も登録をしなおさねばならなくなりました。
雇用する側がスポンサーとして認められる→雇用される人の資格がポイントを満たしているか調べる→ビザ発給というわけです。
今回私はスプリングローディドという春のフェスティバルに参加することになっていますが、現在のビザはラッセルカンパニーが発給したもので、雇い主が違うことから新しいビザが必要ということになり、急遽作ることになっています。が、プレイスはそのスポンサーとしてまだ認められていないということが明らかになり、実はかなり慌てています。
プレイスの活動規模が海外からの労働者を受け入れられるほどとは認められないということのようですが、プレイスの規模で無理ということはほとんどのカンパニーで受け入れられないとなるということです。
今回の事例では間に合わないことからサドラーズウェルズの力を借りることになりました。サドラーズに雇われている人になるそうです。(まあ、1週間とかでしょうが)逆にいえばサドラーズは今も昔もパミットを発給できるということで、サドラーズに出入りしているカンパニー(ランベー、ラッセル、ニューアドベンチャーズ等々)はありえますが、他では無理となります。今まで以上に海外労働者にとっては厳しくなっていることをお伝えしておきます。
なお、あまりに厳しいということで、既にサーカス業界で悲鳴が上がっていると新聞記事にありました。(というのもウクライナなどの土地から来る曲芸師たちが入国できず、サーカスの運営自体が危ぶまれている。技術職ですし)なので、あと1、2年もすればまた法改正があるかもしれません。

2009年3月8日日曜日

いくつかの記事を載せました

ここのところ停滞していましたが、少し足しました。しかしまだたまっています。かかねばです。一応過去記事もラッセルeonnagata、ホフェッシュ、南村さん少しずつ更新しています。
あまりにも膨大で、学校情報などまでのせることができません。ごめんなさい。でもおってすこしずつ続けようと思います。どうぞよろしくお願いします。

Global dance contest

Global dance contest
サドラーズウェルズのアリスターさんは新しいコンペを思いつきました。ジャンルは問わない、新しいダンスをみせてくれ。
良かった作品は来年1月に開かれるサドラーズウェルズサンプル(コレはサドラーズのフルメインキャストによるお得な感じのサンプル公演、小作品がたくさんでるのでいろんなものを楽しめる。従ってでる人も超豪華。)で上演できる!というもの。
おまけに4年間の各年の勝者は2012年に共同で作品上演を行なえるらしい。ということは当然サドラーズがプロデュースするわけで、それもまたすごい話しだ。ちなみに2012年はロンドンオリンピックイヤーです。

応募も簡単。
7月17日までに30秒から3分以内のビデオを作ってユーチューブにあげればよろし。音楽持ってないよーという人にはここからダウンロードできるよ。(ちなみに音楽は自分のすきなものでいい、当然だが)というおまけ付き。
18歳以上のすべての人が対象。もちろん日本にいたって応募できる!そういうわけで、興味のある方はぜひ。

英国における深刻な不況

英国のポンドがは現在138円(2009年3月)。2008年大恐慌がおこる前までは260円のこともあったくらいなので半額だ。
これはさすがの英国経済もかなり打撃をうけていて、多くの企業が倒産している。日本でいえばウェッジウッドが有名だが、zabbi(バージンメガストアのあとのCDや)もwoolworth(日本でいう量販店の大手)もつぶれた。そして恐ろしいことに都心部の大手がつぶれたあとはいるところがなく、空き家のママになっているということ。ピカデリーサーカスのど真ん中にあき物件ってやっぱり怖いです。
そういうわけでかなり深刻です。
それをうけてアーツカウンシルイングランドも24%の人員削減を決定しました。日本でいえば財団法人みたいなもので準お役所。そこがこれだけ減らすのです。
今後どうなるかわかりませんが、一番はじめにカットされる文化予算、それもマイナーなダンスが追い込まれることになるのはまちがいありません。

逆に日本円が強い今こそ、英国(あるいはヨーロッパ)にくる時!ともいえます。在研など助成金の金額はそうそう下がらないため、今これば2倍!。そして日本政府(あるいは企業)の助成をうけて行なう海外の公演は行いやすくなるのではないかと思われます。

友人の韓国人がいうには「ポンドはたかいままだ!」日本がおかしいだけで、ポンドは依然強いと考えているようです。しかしユーロと比較しても最近では1ポンド=1、1ユーロといわれているくらいなので、やっぱり下がりかたが激しいです。(韓国のウォンも下がっているから、その差がわからなくなっているのだと思います)

海外旅行にでる際は為替レートを確認しましょう。

ロンドン以外の英国カンパニー② diversions

diversions
SDTをあげたついでにもう1つ、こちらはウェールズのカンパニー。基本的に各国に一個ずつある、コンテンポラリーダンスカンパニー。ここもSDTもレパートリーカンパニーであり、1年ごとに様々なレパートリーを習得、練り上げながら各地で公演を行いつつ、地域の為に貢献しつつという活動を続けている。
ダンサーは10人ほど。その年によるが多くもなく、少なくもなく。英国人が中心だが、必ずしもというわけではない。
現ラッセルカンパニーのシン(韓国人)はここにいた、が、あまりにも寂しくって逃げ出した。(笑)「だってなにもないんだよー畑と森とそれしかない!」と彼はいうが、失礼な話しである。英国の地方は都市生活に慣れた身には正直寂しい土地が多い。なにぶん広い土地を有しているのだ。ただ、本当に豊かであるというのは、自分の作りたいものを自分の作りたいペースで作り続けていくことができるということではないだろうか。
そして自分の作ったものを自分の知る人に知ってもらうこと。
以上2カンパニーは毎年プレイスで公演を行っている。

ロンドン以外の英国カンパニー① スコティッシュダンスシアター

私はうっかり英国/イギリスという癖がついてしまっているけれど、本当は国がいくつかに分かれている。そのうちの1つスコットランドのカンパニー。
SDT
その公演をたまたま見たのでここにかいておくが、公演自体以上に地元の人にダンスを広める活動をしていることを強調していたのが気になった。Creative learning。学校や各家庭にダンスを出張させる(教えること/あるいは公演、パフォーマンス)のだそう。クラスをうけたときに教えていたダンサーの子がいうには教えと公演でしにそう、、とのこと。ちょっと大変そうだ。ただ、ある意味英国のダンスカンパニーのお手本みたいなカンパニーでもある。良いものを安く提供し、ダンスに興味を持つ人を増やそうという試みも、教育と結びついて活動を広げているという点でも。
しかし良いダンサーが多い。ケレンによれば今年ベストダンサー賞をとったランベーのジョナサンは(例の700ポンドダンサーさんだと思う)ここにいたらしい。若手の特に男の子をよく育てるカンパニーらしい。
作品は年ごとにかわる。今年のレパートリーはIna Christel JohannessenとこのカンパニーのダイレクターでもあるJanet Smith のもの。土地によってHofesh Shechterの作品を含んでいるときもある。基本的にウェルメイド、よく作られている。とても英国らしい、フィジックの強い作品。
年ごとにレパートリーがかわるので、基本メンバーは大体一定しているがオーディションもほぼ毎年開いている。ダンサー志望の方はぜひ。

2009年2月6日金曜日

しばらく停滞していますすみません

現在も日本帰国中の作成者です。すみません。ここのところ更新が滞っています。しかし今後少しずつでも続けますのでどうぞよろしくお願いします。
質問等ありましたらコメントをおのせください。
コメント機能をつけました。間違い等ありましたら突っ込みをいれてくださるようお願いします。なにぶん個人のブログ。読みづらいこともあるかとは思いますが、少しでも広まってくださることを祈っています。
ロンドンに留学してみようかな、ちょっと旅行に行くついでにダンス見てみようかなと思っている方に、ぜひ見ていただけたらと思います。お知り合いの方にもお伝えいただけると幸いです。

アーティストがイベントを作るのか

we danceというイベント内で質問がでたため、補足します。

そもそもwe danceというのは岡崎さんの呼び声でダンサーたちが集まり自分たちがやってみたかったことを横浜開港記念館という一件の建物を使って同時多発的に現実化させようというプロジェクトだったと思っています。その中でダンサーがもっと主体的になって企画運営をすべきということがでてきました。
ロンドンはどうですか?という話しがでたので簡単に説明すると。
振付家、ダンサーとマネージメントやオーガナイザーは別物です。が、とても密接に結びついています。というのも多くの元ダンサーがそのような仕事に就いているからです。年齢や家族を支えなければということもあってダンサー業をやめた人々がそれでもダンスを愛していて、ダンスを広める仕事についていることがよくあります。またダンサーとして時々おどっているけれどアルバイトでオーガナイズをしている現場を手伝っている子も多いです。(ちなみにダンサーとしておどるのはお金にならないこともあり得ますが、このようにお仕事として従事する場合、収入になります。経済活動として1つのビジネスとしてダンスがとらえられていると考えてください)ダンスをもっと広めるためにどうしたら良いか、ダンサーが生きていけるようにするためにどのように社会に働きかけたら良いかは振付家だけで考えてもやはり難しい。少し大きな視野で考えることが必要です。また一人一人の動かせる範囲は結構狭いです。広い視野を持って全体を動かすにはリーダー的な存在が必要で、それはアーティストというか振付家の範囲を超えてしまいます。
プレイスではアーティストデヴェロップメントという部署があり、若手ダンサー/振付家の活動を支援しています。単に情報を与えるだけでなく、彼らの状況を把握し、各種イベントなどをたくらんだりしています。学校内の施設(例えば劇場)を使っての公演がメインですが、ワークショップなどを開いたり、インプロジャムなどの情報をながすこともあります。
gDAでも多くのダンサー予備軍が企画運営を行なっています。ただ、そのイベントでおどる人と企画運営者は異なります。そうしないとパンクするので。だから継続的に入れ替わり助け合いながら補完しあいます。we danceは継続していくものなのか?というのが私の密かな疑問ですが、おいておきます。
集団だからこそできることというのがあります。それを作り出すのも広義においてアートです。が、無理して何でもやらなきゃとなるとパンクしてしまう。そのためにも助け合いが必要です。
私はこれらのイベントを作る/オーガナイズするという作業はダンサー/振付家も関わるけれど多くの人の協力が必要で、それをビジネス的になりたたせるのも1つの能力だと思っています。それがまた続いていくためにも、このような人が増えていけば良いと思っています。私ももっと勉強しなければいけません。(今回助成金申請というものをはじめてしてなきそうになりました。)

マネージメント会社

ロンドンにはダンスのマネージメントを専門にやっている会社が複数あります。これは先日JOUさんの企画でロンドンのダンス事情をお話しする会で疑問に思われた方がいるのでつけくわえとしてのせておきます。
どのようなシステムかというと、所属アーティストの方針を理解した上で仕事を探し集めてくるといったところでしょうか。その他にもツアーを組み立てたり、ダンサーのビザ問題などを解決したりしてくれる強い味方です。私のいたラッセルマリファントカンパニーは元々CUEというところに所属していて、Gwenというひとがマネージメントをしてくれていました。一人(とアシスタント)で6団体ほどを見ていたため、ラッセルの日は2日分。他の日は他の仕事をしているという感じです。このようにすることでマネージメント経費を削減できる他、海外公演などの縁をつなげやすくすることができます。例えば劇場規模にあわせて紹介するカンパニーをかえられる、別カンパニーの公演でいったついでに宣伝してくる、フェスティバルに自分のところのカンパニーを複数いれることができる等。せっかく作られた人脈をフルに利用しようというわけです。
当時アシスタントとして働いてくれていたクレアは独立してMorton Bates companyを設立。友人のジョーと一緒に(会社名は彼らの名字からきている)現在ロンドンの若手どころを一手にひきうけてがんばっています。彼女たちの年齢は20代後半、まだ若いですが、今後が楽しみです。
なお、現在ラッセルカンパニーはフィリップというサドラーズからのマネージャーを呼ぶことになりました。彼はラッセル個人プロジェクト、カンパニーワークの他ウィールドンダンスも担当。おかげで、1月はオーストラリアにべったりだったそうです。真夏のオーストラリア。
このようなマネージメント会社に働いているこの中にはダンサーも多くいます。何日かはアシスタントという形で働いてお金を稼ぎ、おどるときはおどる。勉強をかねて学びます。基本的にマネージメント会社が複数できるということはそれだけ仕事として働く収入を得られるということでもあります。

このブログをかいている人の情報

プロフィールの項目はありますが一応私本人の情報を提示しておきます。下のプロフィールにも情報がありますが参考までに。作品上演の依頼等も随時うけつけています。今後ともどうぞよろしくお願いします。
なお、興味のある方は倫敦の踊子ブログもご覧ください。

木野彩子(きのさいこ)


札幌生まれ。幼少よりモダンダンスを始める。大学にて舞踊教育学を専攻。 卒業後は牧野京子のもとで学びながらソロを中心に自らの身体と向かい合った作品作りを続けている。”Edge”でYokohama solo duo competition2003横浜市芸術文化振興財団賞を受賞。 2004年より文化庁在外派遣研修員としてパリで研修、2005年よりロンドンにてRussell Maliphant Companyのダンサーとして活動をしながら、自作を発表している。

My Works:
“IchI”
The Place Prize 2008 ( London)
Alies Sluiter( music),Jackie Shemesh( lighting),針生 康(装置),上野天志 (ダンス)とのコラボレーション

“The three cornered world”(18min)
Resolution! 2008 at The Place theater (London)
Danse Box at Espace culturel Bertin poiree (Paris)
Spring loaded at The Place theater(London)

“OVO”(18min)
Yokohama solo duo competition 2007at 横浜赤レンガ倉庫一号館ホール
ダンスビエンナーレソウル2007at Seoul
Resolution! 2006 at The Place theater (LONDON)

“Jump for joy”(15min)
ダンスビエンナーレ東京2004show case at 青山劇場フリースペース

“静かに狂う”(1h)
ラボセレクション 2004 at 横浜 ST spot

“箱女”(18min)
Yokohama solo duo competition 2004 at 横浜赤レンガ倉庫一号館ホール
城戸晃一とのコラボレーション

“KINOHAKONOKO”(1h)
at岡本太郎美術館
ヒグマ春夫とのコラボレーション

“In the room”
Korea Japan dance contact 2003 at Seoul
鈴木伸明(音)溝口達也(美術)とのコラボレーション

“Edge”(15min)
Yokohama solo duo competition 2003 at 横浜赤レンガ倉庫一号館ホール
横浜市芸術文化振興財団賞
Japan Korea dance contact at 青山円形劇場
Next wave dance Korea 2003 at Seoul

2009年1月22日木曜日

パフォーマンスアート

たまたまのことだがここのところ日本でパフォーマンスアートをよく見かける。NIPAF(日本国際パフォーマンスアートフェスティバルの略、主宰は霜田誠二さん)というグループに出会ってしまったせいだが、そもそもパフォーマンスアートとパフォーミングアートの違いがわかっていなかった身(辞書をひいていみましょう。簡単にいえばライブアートというか身体も用いたアート文脈のパフォーマンスと舞台芸術全般の違いでしょうか)としては勉強しなければ行けないと思ったのでした。
その矢先英国のパフォーマンスアートについてのっているページを教えてもらったのでご紹介。
これ総括ページのようなものでとても使えると思います。そもそも何?からどうやったらできる?まで幅広くでています。
Lois Keidanさんによるロンドンの団体。


2009年1月19日月曜日

ロンドンでダンサーになろうという方へ② ビザ

私たちは海外からの労働者ということになるので、特別なビザが必要になります。英国には(特にロンドンには)たくさんの日本人がいますが、それぞれビザの問題をクリアした上で暮らしています。そのためのいくつかの方法をいかにあげます。

☆観光ビザ
日本人は6ヶ月以内であれば、ビザの必要なしに滞在することができます。俗にいう観光客の人用です。例えばオーディションをうけに2週間滞在ということは全く問題ありません。たまにパスポートコントロールでオーディションをうけにきましたとかいってしまう人もいますが、そんなことはいわずにっこり笑顔で通り過ぎましょう。
このビザでは6ヶ月を過ぎて滞在したり、労働をすることはできません。

☆学生ビザ
学校に通うためのビザです2種類あり、アルバイトが可能なものとできないものがあります。アルバイトができる場合週19時間までは可能。ただし、エンターテイメント業につくことはできません。

☆IGS
何の略だったか忘れてしまいましたが、大学、大学院を卒業後2年間(今年延長になりました)仕事探しのために滞在していても良いよというビザ。仕事探しということで、様々な職種へチャレンジできるよう、すべての職種につくことができる。各学校へ教えにいったり、ダンサーとして働くことも自由。従って、このビザのある子は自営業者として登録していることが多い。

☆ワークパミット
労働許可証。カンパニー(会社でなければならず、この条件を満たすダンスカンパニーの数はそれほど多くない)の労働者として雇われる際に発行される。それ自体はビザではなく、しかしこれがあれば付随してビザが発給される。これをだすためには28日以上前からの告知(英、EU圏内)、オーディションの開催、それでもこの人でなければならないという理由が必要で、一般の職に比べてエンターテイメント業はとりやすいといわれている。
私が現在有しているのは6ヶ月ごとのタイプで国外にすむ特殊技能者を呼び寄せるという形をとっている。(従って6ヶ月ごとに英国をでなければならないが、大抵ツアー中などに申請をする)特殊技能者なので、他の仕事に就くことは不可。そのカンパニー以外の仕事につく場合はその都度異なるパミットを申請しなければならない。
日本から公演で訪れる場合はまずこのビザが必要になる。また、このビザがないのに勝手に公演などをしていた場合、カンパニーはおとりつぶしになるのだそうだ。

☆婚約者ビザ、配偶者ビザ
英国人と結婚した(する)人にはビザがでる。もちろんなんの労働も可能。英国人だけでなくフランスなど他のEU人と結婚した場合も自由に行き来できる。
友人のしんは「もしプレイスプライズで優勝したら25000ポンドで偽装結婚できるんだって」とがんばっていたが、残念ながら優勝はできなかった。ちなみに彼の情報によると結婚後2年が経過するとそのままレジデンシーを有することができるので、そこで離婚すればいいのだとか。ほんとうなのか?

☆レジデンシー
俗にいう永住権でしょうか。
ワークパミットワーカーとして5年働くと、レジデンシーがとれると聞いています。レジデンシーを所得後は英国人と同じように労働することが可能になります。つまり振付家/ダンサーとしてあらゆるカンパニーを自由に行き来できるということ。EUダンサーははじめからこの立場にいるので、日本人は大変不利です。特にプロジェクトベースの小さな仕事(3ヶ月単位等)はIGSかレジデンシーを持っていなければ難しいでしょう。

☆アーティストビザ
実はこのビザ、なくなってしまいました。現在はワークパミットか、学生の形にして滞在せざるを得なくなっています。友人でこのビザだったこがいましたが、結局ビジネススクールへ通うことにしました。

EU以外の人間にとってビザの問題はかなり大きいです。たいていの人は学生で留学する形をとりますが、英国は学費が高い。およそ年間1万ポンド。ちなみにEU人は3分の1以下です。アルバイトはできますが、制約も多くあります。
また、長期滞在を続けると語学学校に行き続けるのはかなり難しいです。何を目指したいか、目標をしっかり持って留学、滞在すべきと考えています。

私の友人の韓国人は某カンパニー(地方の大手カンパニー)に所属していましたが、契約が切られ、ビジター、観光扱いでがんばって滞在しながらオーディションを点々としていました。しかし、仕事が見つかる前に、不法滞在扱いになり、ドイツから英国に戻ろうとしたら空港で足止めされてそのまま母国(韓国)へ強制送還。フラットにおいてあった荷物などは当時のフラットメイトに頼んでおくってもらうことにしたそうです。
強制送還例は私がしるなかで3回見ていて、語学留学できたのに働くつもりできたのだろうと疑われて入国できなかった美容師さん、留学中の彼女の元に滞在していて、6ヶ月ちかく滞在したので一時的にフランスなどへ逃げて戻れば大丈夫だろうと思って一回出国戻ろうとしたらつかまった音楽家さんをしっています。
冗談だとおもうかもしれませんが、移民が増えて困っている英国では、不法労働者、滞在者に対する締め付けはどんどんきびしくなっています。きちんと調べてみることをお勧めします。


2009年1月18日日曜日

ロンドンでダンサーになろうという方へ

変なタイトルになってしまいましたが、New art club ついでにダンサー/振付家になるまでについてかきます。
基本的にダンサーになりたいと思った子は大学あるいは専門学校にあたる学校へ行きます。俗にいう大学卒業資格BAをとり、しかしそう簡単に仕事が見つからないので修士MAをとり、ラッキーにもそこでうまく仕事が見つかればアペレンティスになります。
アペレンティスというのは研修生という制度で、卒業後各カンパニーの見習いダンサーとして働きます。LCDSのMAには提携カンパニーのアペレンティスになるコースというのがあります。もしくは各大学、学校の卒業生カンパニーにはいって経験を積みます。LCDSではEdge、ラバンにはTransitionがあります。これらのカンパニーは学校付属で、学校のシアターでの公演があることはもちろんですが、UK,ヨーロッパ内をツアーでまわります。作品はUKの若手振付家の作品で毎年異なります。ちなみにこれらのカンパニーにはいるには半分学生なので学費を払うことになります。だから完全なプロとはまだいえません。しかしこのカンパニーにはいるのにもオーディションがあり、卒業生の多くははいれずあきらめることになります。(もちろん各自で他のカンパニーをうけたり、自分たちでカンパニーを作ったりして活動しはじめる人もいるが地元に帰る人もいる)
その修行期間が終わる頃、がんがんオーディションを受けまくるということになります。働いているうちに人脈ができて、オーディションを受けたときに受かりやすくなるといわれていますが、実際にはかなり厳しく、特に女の子は仕事がありません。(逆に男性はかなり受かりやすいです。現在ロンドンダンス男女比はおよそ9:1。女性の方が圧倒的に多いのです)
ロンドンの大学をでた学生には2年間どのような労働をしても良いビザがでます。(今年改正されましたが昨年までは1年でした)従って、カフェなどでバイトをしながら、ダンサーとして時々働きながら生き延びるたくましきダンサーたちがたくさんいます。
しかし現実問題として、そのような生活がいつまでも続くわけではなく、日本人の場合その2年間の間に「労働許可証」をだしてくれるカンパニーに出会えなければ帰国しなければなりません。ヨーロッパ人の場合はそういうビザの問題はないのですがそれでもずっとオーディション待ちダンサーをするのはかなりきついです。
日本人で長く続けていらっしゃるダンサーさんもたくさんいますが、英国人と結婚して生活の不安がなくなった状態で続けていらっしゃる人がほとんどです。これは日本でもそうですが、ダンサーだけで食べていくというのは非常に難しいのです。私のようにたまたまがたくさん重なっている人もいますが、それはすごくレアなことだと思った方が良いと思います。
カンパニーダンサーとはいっても英国のカンパニーのほとんどがプロジェクトごとの契約を交わしていて、日本でいう終身雇用のような考え方はありません。ロイヤルバレエのみそれに近い制度があります。他のヨーロッパと比べるとまだ長く続けるダンサーが多いといわれていますが、それは英国カンパニーのほとんどが学校制度と結びついているからで、年間を通しての契約が可能になっているのは、教える仕事などを含めての契約だからです。そうではないカンパニーの場合、1ヶ月から3ヶ月くらいの単位で契約を少しずつ結んでいくことになります。
プロジェクトベースの場合、作品が売れれば公演も増え、収入も増えますが、売れなければ仕事がなくなります。従って生活はかなり不安定です。ラッセル(マリファント)は昔はスエーデン式マッサージの仕事をしていたとよく話していました。またダンサーがより良い条件を求めて移動する自由がある反面、振付家の方針で使われなくなることはありえます。ラッセルカンパニーでも「できる限り同じ人をつかいたい(なぜなら身体を作り上げていくその過程もまた作品作りだから)」という方針にも関わらず2007年にはメンバーの半分が入れ替わり女性から男性へと変化しています。カンパニーメンバーになったからといって、ずっと安心というわけではないのです。
私はダンサーという仕事は将来何かになるための研修期間のようなものだと考えています。振付家として自分の作品を作るための、あるいは教師として様々なダンスを伝えるための。いろんな考え方があると思いますがダンサーになることだけを目標として生きていくのではなく、その先に何ができるかを考えてみることは大切だと思っています。

このような状況をうけて大学などでの教える仕事や、カンパニーの運営できる環境を求めて地方へ移住するダンサーたちが増えてきました。アーツカウンシルイングランドの項目でもかきましたが、英国ではコミュニティーダンスの考え方が浸透していて、社会にいかに還元できるかを説明できなければ作品制作を続けることが難しいです。また英国の地方に文化を浸透させるために各地方にダンスセンターを設立しており、そのようなところと協力して作品制作やワークショップを行ないながら自分の活動を続けるという人がいます。
そのためにも修士(MA)などの資格が必要ということで、高学歴ダンサーが増える傾向にあります。

なお、ダンサーたちは仕事を求めてヨーロッパ中をまわるようになりました。どこの国のオーディションを受けにいってもロンドンダンサーがいます。ロンドンは学校がたくさんあって、ダンサーが余っているのです。ライアンエアとイージージェットを使えばヨーロッパ中どこへでも。特にヨーロッパ人はビザの問題がないため、自由に職を求めて移動できるのです。
おそらく今後このような流れは一層進むだろうと考えられます。日本でも同様に。


ロンドンの若手振付家⑥ New art club

New art club
よくにた背格好の男性2人組。踊りもおどるが、彼らの会話にファンがいる。gDAのキャバレー企画によくでてくるのもそのせいで、日本でいう漫才コンビのような感じがする。
昨年見た"invisible man"は文字通り透明人間の話し。彼らのような、ユーモアを含めた、でもちゃんとおどるという作家がロンドンには非常に多い。その中で頭1つでているのだから、えらい人たちである。基本的にこの二人だけで公演。
普段は大学で働いているという話しを聞いた。現実問題としてダンサーとして生きていくのは本当に難しい。特に家族がいたら不可能だ。地方の(ちなみにLeicesterはロンドンから1時間10分)大学などにつとめ、学校で教えながら、その大学の施設を使って作品を制作していくのが一般的な振付家路線ではないかと考える。長い目で作品を作り続けていくためには生きていく手段を考えるのは当然のこと。アーティストレジデンスに近い考え方で、ある程度の年齢になると皆地方へ移動していく。

2009年1月12日月曜日

ロンドンの若手振付家⑤ 3人のベン

ロンドンには3人のベンがいる。
なぜかわからないが3人とも似たような名前のカンパニーなので、いつもまちがえる。私だけでなくエディ(プレイスダイレクター)もそういっていたので、狙っているのだろう。
Place Prize 2008振付家。20作品のほとんどを見て、これがファイナルに選ばれたら私は納得できるのにと思った、「ダンス(劇場の)とはなにか」を覆す作品。そもそも夏休みのリハーサル期間中から話しはスタートする。「作品を作るのにボランティア募集」という張り紙があちこちにはられていた。「しかし集まらなかったのだ」という。「だから今この場で勇気あるボランティアの協力を頼みたい」ステージ上にあげられた観客はきんきらきんの恰好にさせられて、なぜかディスコダンス開始。観客にもキラキラ眼鏡を配り、ミラーボールをまわし、お祭り騒ぎを起こして作品は終わる。計画的確信犯。
振り付けというものの概念をぶっ壊したという点で画期的で、その伏線(思い返せばチラシはってたなとか)を張り巡らしていた様を思い出し「やられたと思う」作品。しかし審査員には理解ができなかったらしく、ファイナルへは通過できなかった。ちなみに普段はこの人普通の作品を作ります。ついでにアシスタントとしてでてたダンサーはとても良く動けるダンサーとして知られた子。
The dog kennnel hill project率いる振付家。PlaceのSpring loadedなどで作品を発表する常連振付家の一人。手堅くきっちりおどりつつ、ユーモアを含める手法に定評がある。なぜかアフロヘア。かっこいいダンサーさんなのだけれど、ファッションセンス変だよねという私の友人の意見。
☆Ben Duke
Lost dog 率いる振付家。ちなみにこのlost dog の照明はJackie Shemesh 担当。今プレイスが大事に育ててる振付家第1位ではないだろうか。
インタビューがでているのでこちら
ダンサーが総入れ替えするなどの危機を乗り越え、確実に活動を続けている。彼のところのダンサーはとても個性的な人が多く、エネルギー量も高い。それを扱いこなせるということはつまりは構成力がある人なのだろう。

ロンドンの若手振付家④ 南村千里

南村千里
南村さんは元カンドゥーコのダンサー。耳が聞こえない。しかし読唇術(日本語)、手話(英、日で違うが両方使い分ける)を駆使して英国で作品を作り続けている振付家。
Place Prize 2008で発表した作品は、耳が聞こえない人がどのようにして音を感じながらおどるか、音を見ることはできないか、という彼女の経験から作られた作品。作品の写真はここをクリック。コミュニティーダンスで知られる英国ではあるが、彼女のような存在は珍しく、彼女の存在がまた全国の(あるいは全世界の)耳のきこえない人々の希望となっている。
もちろん作品を制作するのは大変なことで、ダンサーも手話ができる人限定になったり(実際ダンサーが怪我をしてしまい、代役の人を探すのにとても苦労したという話しを聞いた)、説明会などに手話通訳の人をお願いしなければならなかったりと、大変なこともたくさんある。しかしいつも笑顔で、自信を持って動くその姿は、人の心をうつ。私も多く励まされた。
彼女の作品の制作過程はBBC( 国営放送)で取り上げられ、多くの反響をうけた。

その後(2009年1月から3月)彼女はダンサーとしてストックホルムで働いている。
以下は私のブログより書き抜いた部分。


さて、ストックホルムであった南村さんの話しをしようと思います。カンドーゥコのダンサーとして活躍後、現在はフリーのダンサー/振付け家として活動をはじめ、いまもロンドンがベース。しかしなぜストックホルムにいるのかといえば、ダンサーのお仕事でよばれてとのこと。Ricsteaterns tyst teaterというところの作品に参加するとのこと。(なお、ストックホルムでの公演地は私たちと同じdansens hus)3ヶ月のプロジェクトで耳がきこえないダンサー(南村さんと南アフリカ出身の男性ダンサー)と耳がきこえるダンサー(スェーデン人)計4人の作品。仕事の中にスエーデン各地でのワークショップも含まれているらしく、休みがほとんどない!(土曜日も目一杯踊っているのだとか)と忙しそうでしたが、とても楽しそう。
南村さんは耳が聞こえないのですが、手話と読唇術を身につけているので、普通にコミュニケーションがとれます。手話も世界各地で違うらしく、それは大変そう。前にあったときには英語の読唇術は今ひとつでといっていましたが、最近は大分マスターしたそうです。ものすごい努力家さんです。

ロンドンの若手振付家③ Darren Johnston

Darren Johnston
その昔はじめてロンドンにやってきたときに友達となった振付家。しかし振付家と呼ぶべきかどうかはわからない。彼自身は映像も作るし(テレビCMの下請けとかをアルバイトとしてやるらしい)、作品自体もかなりアート色が強い。
2007年にエジンバラで5つ星をとった作品"Ren -sa"はまず観客は目隠しをされてバスになるところから作品が始まる。つれてこられた謎の教会でパフォーマンスを見るのだが、30分以上経過したところで床下から手が!。映画のリングを思わせる衝撃の作品。
その後作成した”Outre”はQEHで上演された。(しかしこの作品については賛否がはっきりわかれている。私個人の感想としては、あの劇場で見るものではないとおもった。)
日本の文化にとても興味があり、過去2回来日。日本の大学でレクチャーをしたり、パフォーマンスをしたりと活動もしている。また日本をテーマにした作品を作ったり、日本人ダンサーとのコラボレーションを行なったりと今後楽しみな人材。
現在の活動拠点は日本だがKappa-te率いる白井麻子は彼の作品に参加していた。ロンドンダンスに詳しい一人。

ロンドンの若手振付家② Anna Williams

Anna Williams
多分Place Prize 2008の中で最も評価が高く、また最も作れる人はこの人だと思う。
元々はラッセルマリファントカンパニーのダンサーとして活躍、現在も時々リハーサルダイレクターなどの形で手伝ってくれている。
動きはアブストラクトだが、美しいラインの使い方と、テキストの読み取り方、構成力に優れていて、単にきれいだけで終わらないものを作る。ただ、おもしろいかというとそういうわけでもない。きちんと手堅く、丁寧に作品を作る人。うまい。
最近作はGate theater プロデュース、その後Sadler's wells ( リリアンベイヤーズ)で再演されたI Am falling.このようにかっちり作られた振り付けというものが私は好きではなかったが、テキストとこのように対応して作り合うことができるということに感動した。かっちり作るからこそテキストと向き合える。シェークスピアからの演劇的土台があって、だからこそ、英国のダンスはこうなんだと納得させられてしまった作品。

ロンドンの若手振付家① Dam Van Huynh

Dam Van Huynh
フェニックスダンスにいたダンサー兼振付家。フェニックスダンスにいたが、契約が切れて国(アメリカ)に帰ることになったと聞いていたけれど、復活できることになったらしい。1月6日付けでオーディション告知をだしているので、振付家としてがんばろうとしているのかもしれない。
Place prize 2008でファイナリストに選ばれ、10日間連続オーディエンス賞を受賞した実力の持ち主。作品はといえば「3men in pants」。三人のマッチョな男性ダンサーがパンツでバリバリおどってるというもので、「これが一位をとり続ける(それもダントツで)ってどういうことよ、それでいいのかロンドンの観客は」といわれながら、しかし英国民のストライクをついたのだからそれはそれですごいことなのだろうと思う。ちなみに本当にバリバリおどります。とても英国ダンス的だと思うし、こういうのを見ると私はダンサーといってはいけないなとつくづく思ってしまいます。
ちなみにその年のPlace prizeはAdam Linderというこがとっています。

2009年1月8日木曜日

ロンドンの助成団体⑤ Sasakawa foundation

Sasakawa foundation
英国(ロンドン)日本に特化した助成団体その③はグレートブリテン笹川財団です。が、私はあまり詳しくありません。ここの申請は学術団体などに限られ、私のように個人で活動しているひとには縁がありません。
ただ、アシュフォードさんは「笹川はだすとうかると聞いた」とどこから聞いたんかいなと突っ込みをいれたくなるような情報をくれました。なお、HP上には75%が採用される(ただし申請金額全額がでるとは限らない)とかかれています。これは正直言って驚異的な数字だと思います。どこからお金がでるのか気になるところです。
従って英国でなにかイベントを開催するような際にはぜひ確認を。

ロンドンの助成団体④ Daiwa foundation

Daiwa Anglo-Japanese foundation
日本語のページはこちら。私たちの中では大和と呼ばれるこの団体、リージェンツパークの中にオフィスを構えている。事務所の他ギャラリースペースもあり、日本人作家の作品を紹介している。私もそこに展示している作品からイメージを得てパフォーマンスを行なわせていただいたことがある。
日本人アーティストの紹介ということで毎月紹介イベント、トークなどを行なっている。日本マニアな英国人が多数集まっていて、ロンドンでは密かに知られている場所である。なぜこれほどたくさんの人が集まるのかといえば、ここにはスカラーシップ制度がありそれで日本で日本語を学びにいったんだ(ちなみに期間は1年以上で独自のプログラムに基づいて指導を受ける。それでいっていた人は、皆日本よかったよーと思い出話を語ってくれる。親切な人が多い)という人が実はかなりいるからである。友人の振付家Dはこれに応募しようとたくらんでいる。
前出AODにも助成。
金額は大きくないらしいが、個人でも申請可能な数少ない助成団体。

ロンドンの助成団体③ Japan foundation

このページを読んでいるということはおそらく日本人(たまにあり得るのが日本語堪能な韓国人)なので、日本系のfundingシステムをご紹介
日本語でいう国際交流基金は英語表記でこうかく。ヨーロッパにはロンドンの他パリ、ケルン、ブタペスト、ローマに支部があるらしい。ロンドン支部は当然のようだが英語圏なこともあり日本人も多く住むせいか日本関連イベントもかなり多い。
おおよそ月に一度くらいのペースでセミナー/レクチャーを開催する他、各種助成申請なども受け付けている。担当の竹川さんには大変お世話になっています。ただ、竹川さんがいうにはジャパンファウンデーションの範囲はダンスだけではなく学術、教育プログラム等多岐にわたるため、ダンスにあまりお金をつぎ込むことはできないのだとか。
日本語訳の通り国際交流を目的としているため、英国アーティストとのコラボレーション、英国の大学とのリサーチプロジェクト、日本のダンスカンパニーが英国で公演をする際にはまず間違いなくここに関わっています。
最近でいえばAOD( artist open door)というミドルセックス大学と早稲田大学の「日本のコンテンポラリーダンスをロンドンに紹介するイベントを助成し、いくつかのディスカッションがここのオフィスで開催されました。山田うんさん、手塚夏子さん、Kentaro!くんなどが参加しておりました。私もパネラーとして参加しました。(AODについては別途記載)
残念なことに例えば私が英国で作った作品を日本へ持っていくことに対しての申請はできません。また私が英国の友人と作品を制作する場合も英国にいる身なので申請ができません。逆に言えば日本にいる方が英国で作品を発表したり、制作するための制度ともいえます。

ロンドンの助成団体② British council

British council
ブリティシュカウンシルにも当然助成制度はある。が、残念ながら外国人は申請することができません。従って私はいまだこの項目をほとんどよんでいないです。ごめんなさい。
しかし基本的に英国人(British)のカンパニーが世界的に活動するためにどうするか?いかに英国ダンスを広め、いかに売るかを考えているところ考えてみてください。従ってここのように様々なイベントを各地で開いたりします。
ただもし日本人と英国人とのコラボレーション作品などを作ることになった場合、ここのお世話になることもなくはないでしょう。

ロンドンの助成団体① Arts council England

Arts council England
英国と私たち日本人は呼ぶがUnited Kingdomは大きい。4つの国が合わさった連合国のようなものである。ロンドンのある地域はイングランドと呼ばれ、当然その地域の行政団体が存在する。日本でいえば地方自治体があるようなものか。サッカーのワールドカップを思い出してもらえばわかるだろう。あの白地に赤十字のユニフォームはイングランドであってブリテイッュ、UKのものではない。
さて、そういうわけでイングランドの文化庁のようなところがこのアーツカウンシルイングランドである。さらにそれでも大きいので各地方ごとに分かれている
ここの助成はイングランド初の文化を育成したいということで、英国に住む外国人(例えば私のような)も申請ができるようになった。実はこれは昨年からのことで、移民の国となりつつある英国の現状を表しているとも思う。また地方の文化育成のため、地方公演、地方制作の舞台を積極的に支援している。(ロンドンの他最低2カ所の他地域での公演をすることが申請の際の条件となるし、ロンドンからだしたらまず通らないといわれている。従って友人には実家などをフル活用し、本当はロンドンに住んでいても地方から申請するものもいる)
ロンドンオリンピックがあったり、宝くじが売れなくなったり、予算が削減されて厳しい状況ではあるものの、ロンドンダンスにとって心強い味方であることは事実。ただ、最近「自立できないところはきる」という厳しい姿勢にかわり、総予算の60%は自らうみだせることが必要とかかれていた。現実問題としてChisenhale dance のようにいきなり予算削減をうけて運営ができなくなろうとしている団体もある。
2008年から11年の間の予算は1.3billion pounds が政府から、0.3billion pounds がナショナルロッタリー(つまり宝くじ)からくるのだという。なお、宝くじからの支援は受けたくないという人はその旨を申請書に明記すれば、それ以外の予算からあてて支払われるという制度がある。

ショーケース① decibel

decibel
マンチェスターで2年に一度開かれているダンスのショーケース。ダンスだけでなく演劇、パフォーマンス、劇場外での公園でのパフォーマンスなどもふくまれている。(最近はその辺りの境界があいまいになっていると思う、なのであまり詳しくはつっこまない)
私は訪れたことがないが、やってみたらと紹介された(応募しても採択されるかどうかはわからないのが痛い)。アーツカウンシルイングランドと連動しているため応募書類もほぼ同じものが使われている。また正式に受け入れられた場合、移動のための費用や、滞在費などもだしてもらうことができる。(さすがにギャラはでないです。)英国の他の地域へ自分の作品を紹介する良い機会といえる。
このショーケースのポイントは応募に3種類の方法があって①既に完全に出来上がっている作品②できていないけれど、作っている途中の作品、③まずはアイデアを紹介したい、とりあえず様子見のように現在の状況に応じて参加することができる。例えばこのdecibelのときにワークインプログレスだった作品をその後プレイスなど劇場で正式に発表できるように成長させることができる。また販売(言い方が変だが)することができる。
また、このショーケースにだせるように作品を助成金をうけて制作するということも不可能ではない。(現実的にはアーツカウンシルは最低3カ所での公演あるいは1回の海外公演と2回の英国内公演をといっているので、このショーケースだけでは難しい。)
日本にはない制度でもある。
次回開催は2009年9月。1月に締め切りということで、応募はまだまにあう。

ロンドンのダンス情報を知る⑥ British dance edition

British dance edition
一般にBDEと紹介されるこのイベントはブリテイッュカウンシルが開いている2年に1度の大ショーケース。世界中からプロデューサー、ダイレクターを招いて英国カンパニーの公演を行います。一カンパニー30分以内、従ってその年に作った作品をダイジェストにしたもの(あるいは30分以内の小品)をみることができます。これらの公演は一般には公開されていないので、事前にブリテイッュカウンシルと連絡を取り合った方が良いとは思いますが、英国ダンスの全貌を知るとてもいい機会だとおもいます。(なお、毎回日本からどなたかが招かれます、2年前にはTpam丸岡さんにお会いしました)
2008年1月にはリバプールでひらかれました。リバプール中の劇場と大学をフル動員しているので皆ではしごしながらみます。次は2010年になります。
当たり前ですが英国中のダンサーたちが集結してくるので、ロンドンあるいは地方の友人にばったりあったりします。ひさしぶりだねえ、元気ー?という会話からはじまり、密かにダンサーたちのネットワークのために役立ったりしています。国中からみんな大集合なんてなかなか機会がないとできないですものね。
このようなイベントが開かれるのはダンスが英国の一産業として認められているからです。ビジネスとして、英国を広めたり、雇用を促進するのに役立つという考えがあります。

ロンドンのダンス情報を知る⑤ British council

British council
ロンドンダンスを語る上で忘れてはいけないブリティッシュカウンシルを紹介します。日本でいうと文化庁に相当するんでしょうか。英国の教育、アート、科学などを紹介するのが主なお仕事になります。従って留学などの情報もここの中にでています。ダンス留学に限らず英語の留学も含まれます。
実は日本にもブリティッシュカウンシルはあって、相談にのってくれます。ちなみに世界各国にあり、それらが英国ダンスカンパニーを招聘して公演を行うイベントなどを開催していることがあります。
英国のアートについて調べたい場合はまずここをチェックしましょう。
日本語のダンスページもありますがここはそこから英語のページをひらいてみましょう。
英国のダンスカンパニーの基礎情報がでています。みればわかりますが大規模のカンパニーは俗にいうバレエカンパニーレベルで20名以上の大所帯です。おそらく日本で見かけるようなカンパニーは中規模のカンパニーとして紹介されています。もちろんソロ、デュエットで構成している/あるいは小作品だけを作っているちいさなカンパニーも多くあります。ここに紹介されているのはブリティッシュカウンシルが助成を行うくらいの知名度があるカンパニー。もちろん、そこまでいかないところはたくさんあります。